昆虫は、可視光線よりも波長の短い紫外線(UV)を見ることができる。1つの花の中に紫外線を反射する部分と吸収する部分があることは、虫媒花にとって、昆虫の誘引や誘導のための模様としてはたらいていると考えられる。
最もしばしば見られるのは、中心の紫外線吸収部を紫外線反射部が取り囲んでいる花で、簡易紫外線写真では「中黒」あるいは「目玉模様」のパターン(英語では「的の中心」を意味する“bull's-eye UV pattern”)を示す。典型的なものでは、雄しべ・雌しべが紫外線を吸収し、花冠が紫外線を反射する。しかし、中には、菜の花のように花冠が紫外線吸収部と反射部に「塗り分け」られていて、花の中心の吸収部を「大きく見せかけている」ものもある。
キク科の丸く密集した花序(頭状花序・頭花)は、1つのまとまりとして訪花昆虫を誘っている。そのため、花序全体として中黒パターンを示すものがしばしば見られる。
横を向く花の中には、ツツジ類・ホテイアオイ・ペラルゴニウム属のように雄しべ・雌しべの上に位置する花びらに紫外線吸収部を持つものがある。吸収部の奥には蜜腺があり、吸収部は昆虫を蜜腺に誘導する目印(蜜標)になっていると考えられる。
同じように横向きに咲く花でも、シラン・ウツボグサ・ヤマハッカ・キケマン属の花では、花の中心か下方に位置する花びらが紫外線を吸収する。紫外線を吸収する花びらは、昆虫が訪花するときに足場にするところと一致する。
全体が紫外線を吸収する、あるいは、全体が反射して、紫外線のパターンを示さない花も多い。紫外線のパターンは、菜の花のような黄色一色の花に多い傾向がある。逆に、紫系統の花には花全体が紫外線を吸収するものも多い。
以下のページでは、ふつうの写真と、紫外線透過・可視光吸収フィルターをつけて撮った写真(簡易紫外線写真)を並べている。