近紫外・近赤外撮影と色収差

波長が違う(色が違う)光が、レンズを通って屈折すると、波長による屈折率の違いにより色収差(キヤノンシグマ光機)が生じる。

  1. 軸上色収差: ある色の光が合焦していても、他の色の光がぼやける
  2. 倍率色収差: 同一の物体にピントが合っていても、色によって大きさが異なる。特に視野の周辺部で「色ズレ」として現れる
    色ズレ
    色収差による「色ズレ」と呼ばれる現象の例。ルーペ越しにバーコードを撮影した写真。ループの周辺部を通した画像では強い色収差があり、黒線の上下に赤と青のにじみが出る。

    色ズレ
    上の写真の一部を拡大したものと、三原色に分解したもの。波長の違う光による像は互いに微妙にずれる。

色収差のていどは、レンズの材質によっても異なるため、カメラ・顕微鏡などの対物レンズでは、蛍石のような色収差の少ない(が高価な)レンズ材を使ったり、屈折特性が異なる複数のレンズを組み合わせて色収差を小さくしている。

デジタルカメラのレンズも、可視光の範囲内では、色収差は最小限に抑えられている。しかし、紫外線・赤外線の色収差は(少数の対応レンズを除いて)補正の対象外だ。

軸上色収差

可視光でピントをあわせても、近紫外線・近赤外線では軸上色収差のためにピンぼけになる。


斜めに立てかけた印刷物を可視光(左)・近赤外線(中)・近紫外線(右)で撮影したもの(可視光のみF8、他はF4.3)。可視光では4〜5行目、近赤外線では6〜7行目、近紫外線では7〜8行目にピントが合っている。Caplio GX

Caplio GXでは、可視光でピントを合わせると、近赤外線では後ピン、近紫外線では、わずかだがそれよりさらに後ピンになる。この機種では、近紫外でのピント合わせが(暗すぎたりして)どうしても不可能な場合、近赤外であわせてから、わずかに近接側にずらすことで、近似的にピントを合わせることができる。

単一のレンズであれば、近赤外のズレと近紫外のズレは逆方向になるが、複合レンズでは、同じ向きにずれることが多い。
倍率色収差

同一の被写体(トマトの花)を可視光と近紫外線で撮影し、2枚の画像を重ね合わせたもの。近紫外線の画像が一回り大きい。


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