4-5. 葉の付き方・並び方
4-5-1. 葉序

茎頂周辺での葉原基の規則的な配置は、茎が伸びてからも葉の付き方の規則性に反映している。茎のまわりに葉がどのようにつくか(葉序[phyllotaxis])は、基本的には次の3つに分けられる。

  1. 茎を取り巻くように1つの節に3枚以上の葉がつく――輪生[whorled]
  2. 1つの節に茎をはさむように2枚の葉がつく――対生[opposite])
  3. 1つの節には1枚の葉しかつかない――互生[alternate]
ヤブツバキ
互生のヤブツバキ(ツバキ科)

マサキ
対生のマサキ(ニシキギ科)。枝を平たく圧したところ。

キョウチクトウキョウチクトウ
輪生・3輪生のキョウチクトウ(キョウチクトウ科)

3つのそれぞれは、葉と葉の角度に注目するとさらに細かく分けることができる。

輪生は1節につく数で「×輪生」のように呼ばれる。キョウチクトウの例のように、隣り合う節どうしでは、葉の付き方は互い違いになる。

オランダミミナグサオランダミミナグサ
オランダミミナグサ(ナデシコ科) 対生・十字対生の例

オランダミミナグサのように、対生葉序で対になる2枚の葉が茎を挟んで反対どうしになり、次の対は前の対と90°の角度を作ってつくと、真上から見て十字形になるので「十字対生」と呼ぶ。

ウラジロチチコグサウラジロチチコグサ(キク科): 互生・2/5葉序の例
ウラジロチチコグサウラジロチチコグサ(キク科): 互生・2/5葉序の例。下から順に葉に番号を振ってある。

互生葉序では葉の付け根を線で結ぶと茎に螺旋(らせん)を描くことができるが、螺旋が前の葉から次の葉の間に茎の周りをどれくらい回り込むかがおおよそ決まっていることがある。ウラジロチチコグサでは、次の葉までに茎を2/5周(2/5×360°=144°)するので、「2/5葉序」と呼ばれる。図のように葉に下から番号を振ると、6番の葉は茎をちょうど2周して1番の葉の上にくる(茎のねじれによってずれることはある)。

2/5葉序は、ごくふつうに見られ、茎を真上から見ると、葉は、茎のねじれを度外視すれば、72°ずつ角度を置いた5つの列をつくる。葉に下から順に番号を振ると、N番の葉のほぼ真上に(N+5)番の葉が位置する。

キャベツ キャベツ
キャベツ(アブラナ科)のシュートは2/5葉序を持ち、葉は約360/5=72°の角度を置いた5列をつくる。

キャベツ キャベツ
キャベツの外側の葉を取り除くと、上から見て五角形になることが多いのは、これを反映している。

隣り合う葉が約180°の角度を取り、葉や腋芽が平面的に縦2列に並ぶ互生葉序を「二列縦生」と呼ぶ。単子葉植物に多く見られる。

マダケ マダケ
マダケ(イネ科)の二列縦生葉序

セッコク園芸品 オオキツネノカミソリ
セッコク園芸品(ラン科)・オオキツネノカミソリ(ヒガンバナ科)
4-5-2. 葉の空間配置

葉の空間配置

葉序は、葉の基部の配置に注目した分類だ。しかし、光合成をするという葉の役割の面から見ると、葉の空間配置=葉身面が空間にどのように配置されるかの方が重要になる。1本の枝に多数の葉を付けた方がたくさんの光を受けられるが、葉と葉の重なり合いがあまり多いと、下の方にある葉には上方の葉を透過した光しか当たらなくなるので、効率が悪くなる。

シュートの形と受光効率については、国立環境研究所・竹中明夫氏のページが詳しい(特に木の形作りと資源獲得植物は形で勝負する光獲得構造としての植物のマクロなかたち)。
ヘラノキ
ヘラノキ(シナノキ科|アオイ科)のシュートを下から見上げたところ。

トベラトベラ
トベラ(トベラ科)のシュート。トベラのように、互生葉序で節間が詰まって1ヶ所から葉が出ているような状態を「束生」ということもある。

ミズキミズキ(ミズキ科)のシュート
ミズキ

ヘラノキ・トベラ・ミズキとも、多数の葉が少ししか重なり合わずに並んでいるだけでなく、使える空間を効率的に使って葉を配置している。詳しく見ると、ヘラノキでは、

  1. 葉と葉の間隔(節間長)はほぼ一定
  2. 他の枝の葉と重なりやすい基部側の葉は小さめ
  3. 個々の葉は左右非対称で、枝寄りの側が「下ぶくれ」気味

の3つの特徴が寄与している。トベラでは、

  1. 枝の先端にびっしりと(非常に短い節間長で)ついた葉が360°のさまざまな方向に広がる
  2. 葉身は全体的に細長く、特に基部は細まって隣の葉と重ならないようになっている

の2つの特徴が寄与している。また、ミズキでは、

  1. トベラの同様、枝先に集まった葉が360°のさまざまな方向に広がる
  2. 長い葉柄・丸い葉身の葉と短い葉柄・やや細長い葉が混在することで隣の葉と重なりを小さくしている

3種の樹木は、やり方は大きく違うが、葉のつきかたと葉形の2つの組み合わせで効率的な空間利用をしている。

4-5-3. 短枝

短枝は節間が極端に短いシュートで、直立して葉を放射状につけることが多い。短枝は節間が長く横か斜めに伸びるシュート(長枝)につく。イチョウ(イチョウ科)・アオハダ(モチノキ科)・カツラ(カツラ科)など、多数の樹木で見られる。

アオハダ
アオハダ(モチノキ科)の短枝。横に伸びる長枝につく。

アオハダのように短枝と長枝の区別がはっきりとした樹木では、長枝に多数の短枝がつくため、葉のほとんどは短枝の葉ということになるので、光合成の多くを短枝が担い、長枝は短枝どうしの間隔を空けるという分担がなり立っている。

4-5-4. 仮軸成長
仮軸成長の模式図 仮軸成長の模式図。↑は伸長中の先端部、×は身長を停止/半停止した先端部を示す。主軸頂端の伸長(1)が止まり(2)、頂芽の下から伸びた側枝が代わって伸長する(3a~c)。次の成長期には側枝頂端の伸長も止まり、同様に側枝が代わって伸長する(4a~c)。
3a・4a・3b・4bは互生葉序の場合で、伸長する側枝の位置によってシュート系はジグザグ形(3a・4a)あるいは波形(3b・4b)になる。3c・4cは対生葉序の場合。

主軸の頂端が(1)頂芽が脱落する、(2)花序となる、(3)短枝となるなど、さまざまな原因で伸長を停止(または半停止)し、頂端の下の側芽から伸びた側枝が代わって伸長する成長様式を仮軸成長[sympodial growth]という。仮軸成長の場合、単一のシュートが伸び続けることはなく、伸長するシュートが次々と(典型的には1成長期で)交代するため、シュート系は「折れ線状」になる。

ヘラノキヘラノキ
ヘラノキ(シナノキ科|アオイ科)のシュート(夏のようす)。それぞれの葉の腋に側芽(腋芽)がある。例えば、番号1で示す葉の腋芽が2だ。ヘラノキは落葉樹なので、当年枝だけに葉がついていて、二年枝では痕(葉痕)だけが残る。また、翌春になると腋芽の中には伸長して側枝となるものが出てくる。例えば、番号3のところにある葉痕に対応する側枝が4だ。言い換えると、葉(1)―腋芽(2)の組み合わせが、1年を経て、葉痕(3)―側枝(4)の組み合わせへと変化する。

ヘラノキ
ヘラノキ(シナノキ科|アオイ科)のシュート先端部。1―葉柄、2―1の葉に腋生する腋芽、3―葉柄、4―3の葉に腋生する腋芽。▼は托葉(葉の基部につく小片)の脱落痕、↑は頂芽の芽痕(ヘラノキでは、春に新枝が生長しきると、頂芽は脱落してしまう)。
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