宇土池南側の堤の植生(維管束植物群集)を記述し、簡単な分析を行います。
凹凸の少ない地形なので、平面を折り曲げた地形として近似する。斜面の断面図を数カ所作成し、あとは斜面垂直方向・平行方向に巻き尺を張って座標を設定して、主要な目標物を記入する。また、斜面の方位も測定する。
各コードラートごとに、次の項目を測定する。
方形区 | 1 | 2 | 3 | 4 |
種1 | 70% | 80% | 50% | 60% |
種2 | 30% | 40% | ||
種3 | + | 60% | 20% | |
種4 | 50% | 20% | + | |
種5 | 20% | |||
種6 | + | |||
種7 | + | + | ||
種8 | + | |||
総被度 | 80% | 90% | 100% | 90% |
群落高 | 0.3m | 0.5m | 1.0m | 0.8m |
取ったデータをもとに、以下の点についてまとめる。
各コードラートごとに、被度合計・種数・種多様度指数(「1-C」を使います)を計算する。
[Box. 群集の多様性の目安] 「種数」と「種多様性指数」は、ともに群集の多様性の目安となる量である。種多様度指数は、種の数にそれぞれの種の占有率を加味して生態系の種多様性を定量化したものだ。 種多様指数は、種の有無だけでなく量的な面も考慮してあるが、反面、量の少ない種の情報があまり反映されないと言う欠点がある(今回の調査でも、5%で切っているために全く反映されない種も多い)。 逆に、種数は、全ての種の情報が反映されるが、量的な面は反映されず、また、調査面積や調査時間(動く生物の場合)を増やせば多くなる点で不便だ。 多様度指数にはさまざまな変形があるが、定義がわりと簡単で実際にもよく使われているものには、次の3つがある。
シンプソンの集中度指数(C)は、それぞれの種類の占有率(個体数の頻度、被度、重量などの全体に占める割合)を二乗して足したもので、「目をつぶって二回選び出したときに、同じものを二回引いてしまう確率」である。種類が少なかったり、特定の種類に偏っていれば集中度指数は大きくなり、多様度指数は小さくなる。種数にしろ、種多様度指数にしろ、どちらにも長所と短所がある。また、ともに一つ一つの種の個性や重要性・希少性は考慮されてないことにも注意する必要がある。そうした天を踏まえた上で使えば、このような定量化は、論理的に考察を進めるときに大きな助けとなる。とくに、複数の調査地どうしを比べるとき、一つの調査地の時間的変化を調べるときなどのような相対的比較で有効だ。 |
方形区 | 1 | 2 | 3 | 4 | 全体 |
種1 | 70% | 80% | 50% | 60% | 65% |
種2 | 30% | 40% | 18% | ||
種3 | + | 60% | 20% | 20% | |
種4 | 50% | 20% | + | 18% | |
種5 | 20% | 5% | |||
種6 | + | + | |||
種7 | + | + | + | ||
種8 | + | + | |||
被度合計 | 100% | 130% | 170% | 100% | 125% |
総被度 | 80% | 90% | 100% | 90% | 90% |
群落高 | 0.3m | 0.5m | 1.0m | 0.8m | 0.7m |
種数 | 3 | 3 | 6 | 5 | 8 |
種多様度指数 | 0.42 | 0.47 | 0.72 | 0.56 | 0.67 |
種多様度指数の計算例(方形区3の場合)
50+40+60+20=170
種1の占有率=50/170
種2の占有率=40/170
種3の占有率=60/170
種4の占有率=20/170
C = (50/170)2+(40/170)2+(60/170)2+(20/170)2
= (502+402+602+202)/(1702)
= (52+42+62+22)/(172) = (25+16+36+4)/289 = 0.2802・・・
1-C = 約0.72
「被度合計」と「総被度」のの比(被度合計/総被度)は、群落の階層化の度合いの目安になる(ただし、被度5%未満の種が多数あると誤差が大きくなりすぎて信頼性が低くなる)。
調査範囲全体の種の被度・総被度・種数・種多様度指数を計算する。種の被度・総被度は各方形区の値の平均でよい。種多様度指数は種の被度から計算する。
1 | 2 | 3 | 4 | |
1 | 1.000 | |||
2 | 0.333 | 1.000 | ||
3 | 0.444 | 0.667 | 1.000 | |
4 | 0.250 | 0.750 | 0.727 | 1.000 |
上の例で、方形区2と3とでは、種の類似度は[3×2/(3+6)]で0.667となる。同様にして他の組み合わせを計算すると、右ののような「類似度行列」ができる。
1 | 2 | 3 | 4 | |
1 | 1.000 | |||
2 | 0.779 | 1.000 | ||
3 | 0.643 | 0.561 | 1.000 | |
4 | 0.824 | 0.764 | 0.686 | 1.000 |
種の占有率の相違度は、
[(80/130-50/170)2+(0/130-40/170)2+(0/130-60/170)2+(50/130-20/170)2)]/[(80/130)2+(50/130)2+(50/170)2+(40/170)2+(60/170)2+(20/170)2)]=0.439
だから類似度はそれを1から引いた0.561となる。同様にして他の組み合わせを計算すると、右ののような「類似度行列」ができる。
個別の種の分布や特性(図鑑などで調べる)なども考えながら、宇土池堤の草本群落の多様性に、斜面の上部と下部との違いがどれくらい貢献しているか、また、その背景などについて考察する。さまざまなグラフを描いて、どのような考察が出来るかの可能性を探ってみること。
グラフの例: 主な種の空間分布(横軸―方形区番号・縦軸―種の被度の折れ線グラフ)、群落の高さと種数・種多様性の関係