

カミソリの刃(両刃)[double-edged razor blade]は非常に鋭利である一方、寿命が短い
開封したところ
紙に包んだまま縦に2つに割って使う
ツバキの葉を約5mm幅の短冊にする
ピスに約1cmの切り込みを入れ、切り込みに葉の短冊を挿入し、先端を削って平にする(ここまでは、使い差しの切れ味の悪くなった刃を使う)
利き手でない方の指でピスをつまむように持つ

多数の切片ができたら、スライドグラス上に滴下した水溜まりに移す(ピンセットの先端を濡らして運ぶ)。緑色の薄いものだけを残し、カバーグラスを掛けて検鏡する導管(道管)[vessel]: 植物が吸収した水溶液が上昇する通路である。
円柱形の細胞の列から、で細胞と細胞を仕切る細胞壁が貫通し、細胞自体は死んでしまうことで形成される。貫通していない部分の細胞壁は部分的にリグニンを含む二次細胞壁がついて厚くなる。厚くなった部分は多くの種類で「らせん」や「輪っか」を描く。
顕微鏡で導管を横から見ると、まるで細胞壁の肥厚部がバネのように見え、断面を見ると厚い縁を持った空っぽの穴に見える。


篩管(師管)[sieve tube]: 光合成で出来た糖を含む水溶液が移動する通路
導管・仮導管と同様に細胞列が空洞化して(道管と違って完全に空っぽにはならず、細胞質がわずかに残る)管になる。ただ、道管と違い、仕切っている細胞壁は完全に貫通するのではなく、小穴がたくさん空くことで両側がつながる(この部分が篩―ふるい―[sieve]に似ているため「篩管」の名が付いた)。また、空洞化する前に細胞分裂で列の横に小さめの細胞(伴細胞)の列ができる。篩管の細胞と違い、伴細胞は中身が詰まっている。
横から見ると、太くてほとんど空っぽの細胞に見える(道管ほどには太くない)。そして、横に小さくて中身が詰まった伴細胞の列が寄り添っている。断面でも、空っぽの細胞に伴細胞が隣り合っている。また、場所によっては、穴がたくさん空いた篩板が見える。


導管・仮導管の集まっている部分を木部[xylem]、篩管の集まっている部分を篩部[phloem]と呼ぶ。導管・仮導管(または篩管)だけが束になるのではなく、繊維・柔組織などさまざまな細胞と混じって木部(篩部)を形成する。
木部と篩部が互いに近接していることが多いので、両者をまとめて維管束[vascular bundle]という。維管束の並び方や、維管束の中での道管と師部の位置関係は、植物のグループによっても違うし、同じ種類でも茎・葉・根で異なる。

ニンニクの茎の維管束(徒手切片・サフラニン染色)。中央少し右の大きくて縁のある「穴」が導管。導管から左側へ少し離れたところにある小さめの細胞からなる組織が篩部で、比較的大きい篩管と小さな伴細胞が入り混じっている。
セイタカアワダチソウの茎の維管束。上から、師部繊維細胞群(サフラニンで鮮紅色に染まっている)→師部(細胞壁はやや厚いが染まっていない。大小の細胞が入れ交じる)→形成層(細胞壁が薄い)→木部(暗紅色に染まった導管がある)。組織の中には、細胞壁が厚くなり、強度を高めるはたらきを持つ細胞群が見られる。
厚角細胞から構成される組織は厚角組織[collenchyma]、厚壁細胞からなる組織は厚壁組織[sclerenchyma]と呼ばれる。細胞壁が薄いままの細胞(柔細胞)からなる組織は、柔組織[parenchyma]と呼ぶ。

植物の葉や茎の薄切り(切片)をつくる方法にはいろいろあるが、低倍率で観察するなら50μmあれば上等、100μm程度でも何とか観察できる。これくらいの厚さなら、安全カミソリの刃(レーザーブレード)を使って手で切ることができる(徒手切片法)。もっと高倍率で観察するために薄く(30μm未満)切るには、パラフィン切片法など、もっと面倒くさい方法が必要となる。
この実験では、こちらで用意したパラフィン切片によるプレパラートで、その後、徒手切片を作成して道管・師管・維管束、その他の組織の観察をする。
| 材料名 | 切片名 | スケッチ課題 | スケッチに記入する名称 |
| パラフィン切片法による永久プレパラート | |||
| カボチャ(双子葉植物、ウリ科)の茎 | 輪切り | 模式図+表皮~維管束1つの拡大スケッチ | 表皮・厚角組織・厚壁組織・道管・師管・師部伴細胞 |
| スイバ(双子葉植物、タデ科)の茎 | 輪切り | 模式図+表皮~維管束の拡大スケッチ | 表皮・厚角組織・厚壁組織・道管・師管・師部伴細胞 |
| 徒手切片法による一時プレパラート | |||
| ムラサキツユクサ(単子葉植物、ツバキ科)の茎 | 輪切り | 維管束の拡大スケッチ | 道管・師部 |
| 縦切り | 維管束の拡大スケッチ | 道管・師部 | |
| セイタカアワダチソウ(双子葉植物、キク科)の茎 | 輪切り | 表皮~維管束の拡大スケッチ | 表皮・厚角組織・厚壁組織・道管・師部 |
| ツバキ(双子葉植物、ツバキ科)の葉 | 葉脈に垂直な切片 | 表皮~表皮の拡大スケッチ | 表皮・柵状組織・海綿状組織・道管・師部 |
スケッチは次回の実験時に提出。