顕微鏡の扱いと植物細胞の観察
顕微鏡の操作経験がない学生を想定しています
顕微鏡の扱いのあらまし
顕微鏡は「精密機器」かつ「光学機器」なので、次のことはタブー。
-
衝撃
-
急速な操作
-
汚れや水分の付着(とくに、レンズと部品の接合部、隙間)
操作順序
-
顕微鏡を卓上に置いて、場所を定める。ミラー照明の顕微鏡は、光源(蛍光灯または太陽光)が十分に確保できるように注意する(接眼レンズを覗いて確認する)。
-
顕微鏡の状態を確認する
-
照明のダイヤルが切または最低になっている(電球照明の顕微鏡)
-
がたつく→置き場所が水平・平坦か見直す
-
汚れ・水分・粘つき→ペーパーで拭く(レンズの汚れはレンズペーパーを使って拭く)
-
鏡筒と試料ステージの間隔が十分でない(どれくらいで「十分」かは実際に使えば分かる)→粗動つまみで調節
-
微動つまみが左右どちらかに回りきっている→回る方に2〜3周回して左右に十分回す余地があるようにする。
-
リボルバーを回転して最低倍率(ふつう4×)の対物レンズを直下に向ける。
-
照明を点け(電球照明の顕微鏡)、プレパラートをステージ上に真横からセットする。
-
電球の光量は徐々に上げていく。また、最大光量の6〜7割くらいまでで観察するようにする(電球の寿命を長くするため)。
-
観察の対象となる物体を「試料」(または「サンプル」)という。顕微鏡で観察するために、スライドグラスとカバーグラスの間の狭い隙間に挟み込んだ状態にした試料を「プレパラート」という。
プレパラートにするためには、試料は、薄くなければならないし、また、光を透過しなくてはならない。だから、場合によっては、薄切りにしたり、押しつぶしたりする必要がある。
-
試料の観察したい部分に照明の光が下から当たって光っていることを確かめる。
-
粗動つまみを回して、対物レンズの先端をカバーグラスに接触しないようになるべく近づける。
-
接眼レンズをのぞきながら粗動つまみを回して、対物レンズの先端を遠ざけながら、試料にピント(フォーカス)を合うところを見つける。うまく合わせられないときは、6.をやり直してから、次のことを上から順に試す。
-
5.がちゃんとなっているか再確認
-
粗動つまみをもっとゆっくりと回すようにする
-
絞りを回して、視野を暗めにしてやり直す
-
カバーグラスの縁に下から光が当たるようにして、カバーグラスの縁にピントを合わせる。その後、5.をして、ピントを合わせる。
接眼レンズを覗いたまま、粗動つまみを近づける方向に大きく動かしてはならない
-
ミラーの向き(または電球の光量)を調節する。
-
絞りを調節する。視野が暗くなる方にすることを「絞り込む」、明るくなる方に調節することを「絞りを開く」という。
-
[倍率を変える場合] リボルバーを回転して(対物レンズを持ってはならない)、一段高倍率(または一段低倍率)の対物レンズを直下に向ける。このとき、対物レンズの先端がカバーグラスに接触しないように監視する。倍率を高くした分、視野が暗くなっているため、絞りを開放してピントが合わせられるくらいの明るさを確保する。
顕微鏡によっては、ピントは少しずれている程度の状態になっているので、微動つまみでピントを合わせる。そうでない顕微鏡では、6.7.をやり直す必要がある。いずれにせよ、ピントがあったら8.9.を再調節する。
-
[ここから収納] リボルバーを回転して最低倍率(ふつう4×)の対物レンズを直下に向ける。
-
粗動つまみを回して、対物レンズの先端とカバーグラスの間に十分な距離を取る。
-
プレパラートを外す。
課題(1〜4)
-
撤収の時、13を11や12より先にしてはいけないのはなぜか、を述べて下さい。
対物レンズの先端がプレパラートに接近している状態でプレパラートを動かすと、レンズにカバーグラスがぶつかって細かい狂いが生じたり、水滴や汚れが付くおそれがある(カバーグラスが割れるのは大した損害ではないし、レンズに傷が付くことは稀だ)。対物レンズは、倍率が低いほど短いので、最低倍率にすれば、レンズ先端とプレパラートのあいだに十分な距離ができる。
-
撤収の時、12を11より先にしてはいけないのはなぜか、を述べて下さい。
粗動つまみを誤って逆方向に回す可能性がある。実は、12は「しなくてもよい」あるいは、むしろ、「しない方がよい」操作で、11のあと直接13に行ってよい。
-
配布した透明シートには、0.5mm間隔の格子が印刷してある。これを1cm×1cmくらいの小片に切り、スライドグラスの上に載せ、カバーグラスを掛けてプレパラートとし、Iまでの操作を行なう。ただし、対物40×では、たぶんまともに見えないので、対物4×・10×で観察する。
対物4×・10×それぞれで、視野(接眼レンズに映る像)をスケッチする。格子は相当太く見えるので、その中心線を鉛筆の線で示すだけでよい(格子の太さは表現しなくて良い)。
スケッチをもとに、(1)視野の直径・(2)視野の面積、の2つを計算して下さい。
顕微鏡により個体差があるため、単一の正解はないが、10×の方が視野の直径が約2/5(0.4倍)、面積が約4/25(0.16倍)になっているはず。この比率からあまりに外れているのは、どこかに間違いがあり、また、その間違いをチェックする習慣を欠いているため、減点の対象となる
-
透明シートを2枚重ねてプレパラートにし、上のシートの格子にピントを合わせてから、「絞り込む」「絞りを開き切る」の両方の状態にしてみる。
・視野の明るさ
絞り込むほど暗くなる
・格子の輪郭のくっきり度
絞り込むほど背景とのコントラストがはっきりとしてくるが、絞りすぎると輪郭がかえってぼやけてくる
・下のシートの格子の見え方
絞り込むほど、下の格子がはっきり見えるようになる。一般化して言えば、絞り込むほどピントの合う範囲(上下方向)が広くなる。このことを、「焦点深度が上がる」という。
を比較して下さい。
植物細胞の観察(ムラサキツユクサの葉の裏の細胞)
ムラサキツユクサの葉の裏の表皮を観察します。そのままでは厚くてプレパラートに出来ないので、表皮だけを1枚剥ぎ取って観察します。
植物の器官(葉・茎など)の表面は、「表皮」と呼ばれる1層〜数層の細胞の層で覆われている。
スライドグラスに小片(1mm四方程度あれば十分)を載せて水滴を滴下し、カバーグラスを掛ける(針とピンセットを使って斜めに、ゆっくりと掛ける。そうしないと、カバーグラスの下に気泡が入りやすい)。ピンセットの先で軽く押さえ、回りに溢れた水を拭き取ってから検鏡する。
課題(5〜7)
-
葉の裏には気孔がある。4×で観察し、視野内の気孔の数を調べ、気孔の密度(個/cm2)を計算して下さい。
-
視野内の細胞数を調べ、細胞の密度(個/cm2)を計算して下さい。
前の方の課題で視野の面積が把握できていれば、細胞のおおよその大きさが分かり、数十μm〜100μmの範囲に収まることが分かるはずで、1cm2には数千〜数万の細胞があるという見当がつく。また、細胞数は気孔数の数倍〜十数倍になるはずだ。あまりに外れているのは、どこかに間違いがあり、また、その間違いをチェックする習慣を欠いているため、減点の対象となる
-
最大倍率で、気孔1つと回りの細胞10個程度をスケッチして下さい。各スケッチに、細胞の名称(表皮細胞、孔辺細胞)、細胞の各部位の名称(細胞壁、核、葉緑体)、孔辺細胞の長さと幅を記入すること。
実験一覧に戻る
ホームに戻る