景色は青く霞む
阿蘇山(高岳山頂付近)から北側の展望
2004年12月15日正午頃の宗像盆地(大学から撮影)。この日は、明け方に冷え込み、夜明けから気温が急に上がって小春日和になった。
この日の気温グラフ
遠くの景色は、青白く霞んで見える。また、われわれは、青白く霞んだものを「遠くにある」と認識する。風景の奥行きを表現する「遠近法」(遠近法 - Wikipedia)には、消失点を使って幾何学的に表現する「〜点透視法」に加えて、遠くのものを青白くぼやかして描く「空気遠近法」も使われることがある[Aerial perspective (空気遠近法) (Dr. John H. Krantz)]。
われわれは、物が反射した光を眼で受け取ることで形や色を認識する。しかし、反射光の一部は、われわれの眼に達するまでに、空気の分子によって散乱してしまう。散乱光は四方八方に出るので、形の情報を失い、むしろ邪魔になる。また、波長の短い光(青や菫色)の方が散乱しやすく、波長の長い光(赤や黄)は散乱せずに直進しやすいために、散乱光は青みを帯びる。遠くにある物からの反射光ほど、より多くの空気を通り抜けるから、より多く散乱され、形は青白い散乱光で霞んでくる。
われわれの眼やカメラの感光素子は、さまざまな色(波長)の光の集まりである景色を、3つの色(三原色)が混じり合ったものとして認識する。画像処理ソフトの機能を使うと、上の写真を三原色に分解することができる(カメラにフィルターをつけて撮影しても、似たようなことができる)。
上の行は、もとの写真を赤・緑・青の三原色に分解したもの。中の行はそれらの白黒(グレイスケール)変換。下の行は、明るさのレベルを揃えるように補正したものだ。赤→緑→青の順に散乱光が多くなり、遠くの景色が霞んでいく。
上のようにして得られた青色のみの景色(右下)の拡大。空気による散乱が多いため、遠くは霞んで見えない。
赤色のみの景色(左下)の拡大。空気による散乱が少ないので、遠くまで見通せる。煙突の煙も見えない。
元の写真を白黒(グレイスケール)に変換したもの。青のみの景色と赤のみの景色の中間。
簡易式の赤外線撮影でとった景色。赤外線は赤色光よりさらに波長が長いので、散乱も非常に少なく、遠景までくっきりと写る。
他にも、よく知られた事実、身の回りの事実には、「波長が短い光ほど散乱されやすい」ことによって説明できるものが多い。
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白黒で風景写真をとるときには、黄色やオレンジ色のフィルターで青い光をカットする方がくっきりとした画像が得られる。サングラスには、紫外線だけでなく、青・菫色光をあるていどカットし、散乱光を減らしてくっきりと見えるようにする効果を持つものがある(製品によっては、偏光レンズを使って散乱光をカットする)
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霧のときは、青い光よりも赤や黄の光の方が遠方からはっきりと見える。停止信号や停止ランプ、フォグランプが赤やオレンジなのはこのことを利用している
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