基礎生物学実験II(植物形態学): ツワブキ(1)

目次: 1.花 | 2.花と果実の関係 | 3.細胞と組織

材料の説明

ツワブキ: 日本(福島県・石川県以南)・朝鮮半島南部・中国東南部に分布するキク科の多年草。

キク科の花では、萼片は細い毛のようなものになっていて、つぼみのときから花冠がむき出しになっている。花はぎっしりと集まってドーム状の花序(頭花と呼ばれる)を作る。花序の下の方の数枚から数十枚の葉(普通の葉より細くて先が尖っている)が、花が咲くまで花序をまるごと覆っている。 頭花を構成する花には2種類ある。
  1. 筒状花: 花びらは互いに繋がって筒のようなかたちになっている。
  2. 舌状花: 花びらは互いに繋がって筒のようなかたちになっているが、筒状花と違い、筒の縁が広がって、1枚の花びらのようになっている。
そこで、キク科の頭花には、3つのタイプがある。
  1. 筒状花だけの花: アザミなど
  2. 舌状花だけの花: タンポポなど
  3. 筒状花が中心部に固まっていて、縁に舌状花が一列に並んで取り巻く: ヒマワリ・ノギク類(ヨメナ・ノコンギクなど)など。ツワブキもこのタイプ。
ツワブキの頭花ツワブキの頭花ツワブキ頭花断面
ツワブキ(キク科)の花序。多数の花が円盤状に集まって、一つの花のような外見を作っている。花序の下には細長い葉(総苞片 そうほうへん; 右の写真で見える)がついていて、つぼみのときには花を包んでいるこういう花序を、「頭花」という。

ツワブキの実 キク科の花では、萼(がく)は、毛の集まり(冠毛)になっていることが多い。タンポポやツワブキでは、冠毛は実が熟するときに長く伸びてパラシュートの役割をする。


実験1: ツワブキの花の解剖と観察

観察の目標

  1. キク科の頭花の基本構造
  2. キク科の花の基本構造
  3. 花の雌雄機能の時間的変化・空間的分化

手順

  1. 開いている頭花を一つ切り離し、下向きに置いて全体をスケッチする。
  2. 各自頭花を1つ選び、頭花1つあたりの筒状花の数と舌状花の数を数える。受講者全員分について、筒状花数と舌状花数の関係をグラフ化する。
  3. 筒状花の観察準備。筒状花は、雄しべと雌しべの形態が時間を追って変化するので、たくさんの花+つぼみを見て、同じ段階にあるもの同士を集めてグループ分けする。いろいろなものを集める。一つの頭花の中では、筒状花は外側が先に、次第に内側が咲いていく。このことを利用して変化の順序を推定する。
  4. 変化のようすが分かるように筒状花(つぼみも含む)のスケッチをする(つぼみからしおれるまで、4段階以上の花のスケッチが必要)。雄しべ、柱頭などは実体顕微鏡を使って拡大してスケッチをする。
    キク科の雌しべと雄しべの形態は少し風変わりなので注意が必要である。雄しべには葯(やく; 花粉袋)がついている。また、雌しべの先端(柱頭)は、花粉が付着するところである。だから、花粉を目印に葯と柱頭を探すと良い。
  5. つぼみを基部から先端にかけて5ヶ所ほどで輪切りにし、断面構造をスケッチする。
  6. 舌状花の観察。筒状花で把握した花の構造を参考にしながら、舌状花の観察・スケッチをする。
  7. 花粉: プレパラートを作成し、花粉の形態を観察する。花粉の直径を計測する。

提出物

A4上質紙にスケッチと花数算定の結果をまとめて提出。1枚に収まらないときは、紙の裏は使わずに複数の紙を使い、左上隅をホッチキスで綴じる。1枚目の最上部に、「基礎生物学実験II ツワブキの花 レポート」と書き、その下に、番号・名前・日付を書く。

全てのスケッチには、下に示されている名称を、それぞれ、線で引いて記入する。
総苞 花冠 冠毛 花粉 柱頭 子房 胚珠

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