「葉にタバコや蚊取り線香の先を押しつけて、しばらくすると現れてくる黒い(正確に言うと、焦げ茶色の)円環」
のことです。植物が好きで、名前を覚えるのを趣味にしている人にとっては、死環はわりとおなじみです。なぜかというと、植物によって死環が出てくるものと出てこないものがあるので、種類を見分けるのに役立つからです。
「出る・出ない」だけではなく、色合いや濃さにも植物による違いがあります。また、すぐには出てこなくても、長時間置いておくと出てくる場合があります。
死環の黒くなったところは、焦げではありません(焦げなら中心部も黒くなるはず)。死環のところで葉を裂いてみると、葉の中まで黒くなっているのが分かります。
黒くなるのは、熱そのもののせいではなく、熱によって細胞が壊れるためのようです。だから、何かで細胞が破れるくらい押しつけてやれば、その部分が黒くなります。熱とは逆に、葉を冷凍庫で冷凍し、それを外に出して溶かすと、冷凍したときに氷によって細胞が壊れ、葉全体が黒くなります。
葉の表面に、割り箸の先で字を書いてみる: 穴を開けないように。中の組織がつぶれる程度の力でよい)
葉の一部にコールドスプレーを至近距離から吹き付ける(凍傷を負わないよう注意)。葉の一部を板などでマスクすると良い。
熱・損傷・凍結によって葉が変色するのは、細胞の破壊により、細胞内外の酸素が葉の中の水溶性のタンニン(ポリフェノール化合物のうち、タンパク質と結合しやすい・渋味があるなど、いくつかの性質を持つものの総称)と結合し、褐色〜黒色の難水溶性のタンニンを作るためと言われています。この反応は、化学的にはかなり複雑なようです。
生物が行う化学変化のほとんどは酵素(触媒作用を持つタンパク質)の働きによって起こりますが、この化学反応も酸化酵素の働きです。死環の出方や色などに種による違いがあるのは、葉の化学的な組成や組織の構造などが種によって違うためだと考えられます。